住民が望んだ未来と、行政が描く縮小案
―― 北千里再開発で何が起きているのか【第4弾】
行政は住民の声をどう受け止めたのか
― 陳腐化リスクを理由に「縮小」を選ぶ行政の責任
北千里駅前再開発――この街の未来をかけたプロジェクトで、今、重大な選択が進んでいます。
行政は「過度な商業拡大はリスクがある」として慎重な再整備を主張。
しかし、住民が意見交換会で描いた未来像と今回の縮小案には大きなズレがあります。
再開発の一次情報はこちら。
📣 北千里駅前再開発の「縮小案」に対し、
住民の声を届ける署名ページが公開されています。
すでに賛同の声も寄せられています。
現在は、まず1000人の賛同を一つの節目として、
行政に正式な再検討要請を行う予定です。
https://voice.charity/events/10198
北千里駅前の再開発について、吹田市が示した方針は
「既存の商業施設の陳腐化と空きテナント化のリスクを避けるため、拡大ではなく慎重な再整備を行う」というものです。
行政の説明は以下です。
吹田市HPより
施設の老朽化や社会環境の変化に伴い、既存の「センター施設」は機能低下や空きテナント化の懸念がある。
再開発は慎重に行う必要がある。
民間施行の再開発事業であるため、採算性や事業成立性なども考慮しなければならず、
過剰な拡大はリスクと判断。
結果として、再整備案では “駐車場・共用スペースを含めた延床規模” をベースに
「必要最低限+保守的」な施設構成を検討するという案が提示されています。
老朽化した施設の更新は当然必要ですが、その解決策として『縮小』が最適なのか?
これは今、地域の多くの住民が抱いている疑問だと思います。
現在示されている方向性は、住民が意見交換会で提案した内容と大きく乖離しています。
意見交換会は「住民と共に未来を描く」ために開催されたはずですが、
結果的に「縮小ありき」の方向に決定が誘導されているようにさえ見える状況です。
そこで今回は、行政の姿勢、住民の声、過去の成功事例を比較しながら、この矛盾点について整理してみます。
📌 再開発縮小の詳細・背景の解説はこちら
お時間がない方向けの短縮版はこちら
1. 行政発言:「陳腐化リスク・空きテナント懸念」
吹田市は、過去の商業施設が空きテナント化した事例を挙げ、再び同じ過ちを繰り返さないために
「過度な規模拡大や大型商業の誘致は避けるべき」と説明しています。
つまり、収益性と需要のバランスを最優先にし、「コンパクトで慎重な再整備」 を選択したのが行政側の論理です。
しかし、これを額面どおり受け取ると、結果として北千里の機能は現在より縮小され、
利便性は低下し、未来の街としての魅力が失われる可能性があります。
2. 住民が意見交換会で提案したアイデア
2023年秋に行われた意見交換会では、参加者が「将来北千里にどんな機能や魅力が必要か」を多角的に議論しました。
そこでは以下のような意見が多数出ています:
「将来ニーズが変わっても使えるように、医療・福祉施設や多世代が集まれるスペースを残してほしい」
「高層マンションは将来荒廃する恐れがある。できれば定期借地などで再開発後も見直しできる仕組みを」
「買い物だけでなく、安心して暮らせる医療/福祉、子育て支援、交流の場を持つ『地域の中心』を残してほしい」
(ワークショップ参加者の複数意見)
つまり、住民が望んでいたのは
「縮小ではなく充実」「ただの建て替えではなく価値の向上」 でした。
以下は、行政が示している説明と、意見交換会で示された住民の要望を整理したものです。
3. 行政方針との矛盾
行政の主張/計画 住民の要望とのズレ 問題点
空きテナント回避のため過度な拡大を避ける 住民はむしろ拡充、多機能・多目的利用を希望 リスク回避の名の下、未来価値を潰す判断ではないか
延床を基準に計画を提示(駐車場・共用含む) 住民が求めたのは「実際に使える機能と空間」 延床=機能強化ではないため、説明が不十分・ミスリードの恐れ
民間主導・採算性重視の再開発 地域の暮らしの質や将来の安心を重視 利益優先の判断で地域の公共性・将来性が犠牲にされる懸念
老朽化更新が目的 未来へ価値を継承すべき 更新の名のもとに機能を削るのは本末転倒
行政は「リスク回避」を理由に縮小を選択していますが、
住民は「価値ある未来への投資」を求めています。
この2つは方向性として全く異なっており、
意見交換会が本当に住民の声を計画反映するための場だったのか
という疑念さえ生まれています。
✅ 本来のまちづくりの姿勢 — 住民との協働と未来への投資
過去の成功したニュータウン再整備の例を見ると、
住民の声を反映する“協働型”の再開発が、街の持続と活力を支えています。
医療・福祉・商業・公共スペースがバランスよく配置された複合施設
多世代が過ごせる広場、交流拠点、子育て支援などの社会インフラ
将来変化するニーズに対応できる柔軟な設計と開かれた議論
まちづくりとは、単なる「建物の更新」「古いものの置き換え」ではありません。
「人の暮らしと未来」を守るための投資 であり、
慎重ではなく、前向き・拡充であるべきだと私は考えます。
つまり、多くの住民は単なる「施設の更新」ではなく、
「未来の暮らしと街の価値を守る再開発」を望んでいたのです。
4. 過去の成功事例 — 千里南地区センター(南千里駅前)
同じ千里ニュータウンの中でも、住民参加型で成功した例があります。
千里南地区の再整備では、住民の意見を取り入れた上で、
公共施設・商業施設・交通広場を一体化し、利便性と賑わいを取り戻しました。
この事例から言えることは――
住民参加を本気で行った再開発は成功する。
縮小や保守ではなく、未来への投資こそが価値を生む。
ということです。
5. 結論:縮小ではなく未来志向が必要
🔎 結論:縮小ではなく、未来志向の再開発を
行政は「縮小」を選ぶことでリスクを抑えようとするかもしれません。
しかし、それは 将来世代への価値を削る選択 になりかねません。
いまこそ、住民の声を改めて掲げ、
「縮小」ではなく「充実」―― 未来への投資 としての再開発を求めるべきです。
そして私たち、地域に住み、街を愛する市民が、
声をあげ、情報を公開し、議論を呼びかけ、行動すること。
それこそが、千里ニュータウンの未来を守る第一歩です。
北千里の再整備は、
単なる「建物の立て替え」ではなく、
地域の未来の方向性を決める分岐点です。
だからこそ、行政は
「リスクを理由に縮小する」のではなく、
住民の声から未来を描き、三者協働で計画を再構築すべきです。
千里ニュータウンの未来を守る会(SFD)としての提言
意見交換会で出た「多機能/多目的施設案」を公式に再検討の場に載せること
再開発の評価基準を「延床」ではなく「実利用面積」と「機能の多様性」に変更
住宅・商業・公共・福祉を包括する「複合型街づくり」を目指すこと
住民アイデアを改めて計画に反映する場を設けてください
民間主導のみでなく、行政・住民・事業者の三者協議体を設置してください
「縮小」ではなく、「未来をつくる再開発」を議論しましょう
子どもたちや次世代が誇れる街を残すために、透明性ある情報公開を求めます
本記事は行政を一方的に批判するものではなく、
住民と行政がより良い合意形成を行うための材料を提示することを目的としています。
最後に
北千里は、私たちが一生住み続ける街です。
未来のために声を上げることは、わがままでも迷惑でもありません。
街は、そこに住む人がつくるものです。
私たちは、未来を縮小させるためではなく、未来を育てるために動いています。
この思いに共感していただけたら、ぜひ一緒に考え、行動していきましょう。
なお、本件に関しては、
北千里駅前再開発の「縮小案」に疑問を持つ住民として、
筆者が発起人となり、地域住民の賛同を募る署名活動を行っています。
※2025年12月20日時点で、署名は20名を超え、現在も増加を続けています。
署名者のうち1名は筆者の家族ですが、
それを除く全員が北千里および周辺地域に暮らす地域住民です。
本署名は、特定の団体や組織による動員ではなく、
再開発の内容や進め方に疑問や不安を感じた
地域住民一人ひとりの自発的な意思表示として集まっています。
この記事を書いた人
Kawauchi(北千里在住)
北千里で生まれ育ち、現在も家族とともに北千里で暮らしています。
地元の再開発が住民の生活や未来世代のために望ましい形になることを願い、
独自調査・行政への問い合わせ・議員への要望などを通じて情報収集・分析を行っています。
数学科大学院修了(理学修士)。
論理と数字を根拠にした客観的視点で、北千里・千里中央再開発について発信中。
地域の未来に関心を持つ方々と、正しい情報に基づいて
より良い街づくりを考えるプラットフォームを目指しています。
プロフィールはこちら。
千里ニュータウンの未来を守る会(SFD)
私たちは、この街の未来のために活動しています。
共感いただけた方は、ぜひ一緒に声を届けてください。
